どうしてお米は天日干しするの?収穫後の大事なひと手間とは
秋も深まり、収穫の季節ですが、「なぜ長期間天日干しにしているのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?
お米は私たちの日常に欠かせない存在ですが、その美味しさの裏には多くの手間と工夫があります。
特に、収穫後の「天日干し」は、昔から続く大切な工程です。
このひと手間が、実はお米の美味しさを決定づける重要な要素となっています。
今回は、大阪府羽曳野市にある米屋「向山商店」から、天日干しの大切さとその具体的な効果についてご紹介します。
天日干しとは?
天日干しとは、収穫した稲を自然の太陽の下で乾燥させる方法です。
この方法は、機械乾燥が普及する前から行われており、日本の伝統的な米作りの風景の一つとして知られています。
例えば、秋になると日本全国で田んぼの中に稲を逆さにして吊るす「稲架(はさ)」が立ち並ぶ光景が見られますよね。
地域によっては特にこの風景が目立ち、伝統的な米作りの象徴となっています。
実は、この天日干しにより、お米の香りや味わいが引き立つと言われています。
「稲架」は地域によってさまざまな呼び方があり、「はざ」「いねかけ」「いなぎ」「いねぎ」「かかけ」「おだ」「あし」「だて」など、地方ごとに異なる呼び名が使われているんですよ。
このように、稲架掛けの文化は各地に根付いており、地域ごとの個性が感じられますね。
天日干しのメリット
では、なぜ天日干しが大切なのでしょうか?主なメリットをいくつか挙げてみましょう。
1. 風味が向上する
天日干しによって、稲に含まれる水分が自然に抜け、お米がゆっくりと乾燥します。
この過程で、お米が持つ天然の甘みや香りが引き出され、より美味しいお米に仕上がります。
2. 食感が良くなる
天日干しを行うことで、お米の外側と内側の水分バランスが均等に整い、その結果、炊いたときにふっくらとした食感が生まれます。
特に、炊きたてのお米はもちもち感が増し、一粒一粒が立つような仕上がりになります。
3. 栄養価が保たれる
機械乾燥と比べて、天日干しは低温で時間をかけて乾燥させるため、お米に含まれるビタミンやミネラルが失われにくいという特徴があります。
特にビタミンB群や食物繊維が豊富に含まれる玄米の場合、天日干しによってその栄養価がより保たれるとされています。
4. 割れ粒の発生が少ない
天日干しは機械乾燥に比べてゆっくりと時間をかけて乾燥させるため、稲にかかる負担が少なく、割れ粒が発生しにくいというメリットもあります。
これにより、お米の品質が向上し、見た目も美しいお米が得られます。
5. 後熟が進む
天日干しでは、穂の形を保ったまま乾燥させることで、後熟が進むという特性があります。
これによって、お米の味わいが深まり、さらに美味しくなります。
6. 省エネルギーで環境に優しい
天日干しは自然の力を利用するため、機械を使った火力乾燥に比べてエネルギー消費が少なく、環境にも優しい乾燥方法です。
天日干しの手間と工夫
天日干しは、時間と労力を要する作業です。
例えば、天候に大きく左右されるため、晴れの日が続くことが必要不可欠です。
また、稲を吊るす「稲架」を設置し、定期的に風通しを確認するなど、細かな手入れが欠かせません。
それでも、天日干しにこだわる農家の方々は、「美味しいお米を届けたい」という強い思いを持っています。
この伝統的な乾燥方法は数百年前から行われてきましたが、近年はコンバインの普及により、生脱穀・火力乾燥による方法が増え、圃場での天日干しは減少してることも事実です。
それでもなお、天日干しの魅力を感じて稲架掛けを続ける農家も一定数存在しているということなんですね。
以前に書いた記事「米不足の今知りたい!秋の収穫と米の供給事情」や「田植えのシーズン到来!お米ができるまでの秘密」も参考にしてみてください。
これらの記事では、米作りの背景や供給事情についてさらに詳しく解説しています。
まとめ
天日干しは、昔ながらの知恵と技術が詰まった、非常に大切な工程です。
自然の力を借りてゆっくりと乾燥させることで、お米本来の美味しさや栄養が最大限に引き出されることが分かりましたね。
次回も、お米に関する興味深い情報をお届けしますので、ぜひお楽しみにしてください!