グローバル市場で光るタイ米:ブランド力を守るタイの戦略とは
日本のスーパーやレストランにて「タイ米」の姿を見かける機会が増えてきました。特に、ジャスミン米のやさしい香りやパラっとした食感を好む人も年々多くなっています。
実はその背景には、タイ国内外での需要拡大だけでなく、グローバル市場で続く激しい競争の存在があるんですよ。実際に、インドやベトナムといった他の大手米輸出国もシェアを伸ばし続けており、価格だけでなく品質やブランド力で勝負する時代になってきました。
では、タイの農家や企業はどのような工夫や戦略で「タイ米ブランド」を守り、さらにシェアを広げているのでしょうか。この記事では、タイ米の魅力や現場の取り組み、そして今後の挑戦について紹介します。
タイ米が世界で愛される理由

タイ米、特にジャスミン米(カオ・ホーム・マリ)は、甘い香りや透き通るような白さ、ふんわりとした食感が大きな魅力です。日本向けの輸出品は、現地での低温乾燥や厳しい品質検査が徹底されており、香りや味が落ちないよう細やかに管理されています。
2023年にはタイ米の輸出量が870万〜880万トンに達し、輸出額は約1,800億バーツと過去最高水準になりました。
こうした高品質へのこだわりが評価され、国際的なコンクール「ワールド・ライス・カンファレンス」でもタイ米がたびたび表彰されるなど、世界各国の高級レストランや一般家庭の食卓で広く愛され続けています。
タイ政府が進めるブランド保護の取り組み
タイ政府は、ジャスミン米のブランド力を守るため、地理的表示(GI)制度を取り入れています。GI制度とは、特定の地域で生産された農産物や食品に、その土地ならではの品質や特徴があることを公的に証明する仕組みです。
このおかげで、タイ東北部など限られた地域で収穫された米だけが「本物のジャスミン米」として認定されています。
さらに、EUやインドネシアなど海外でもGI登録を広げ、偽装や模倣品の対策を強化しています。
環境にやさしいタイ米づくり
タイでは、気候変動による干ばつや水不足への対策が大きな課題となっています。こうした状況に対応するため、水を効率的に使う灌漑方法や、農薬・化学肥料を抑えた有機農法が広がり始めました。
実際、スマート農業の技術が導入されており、ドローンやセンサーを使って水分量や病害虫の発生を細かく管理する動きが進んでいます。
例えば、東北部では地下水の消費量を減らす工夫や、収穫後の稲わらを活用するなど、環境への負荷を減らす取り組みも活発です。
競争が激しい世界市場での差別化戦略
ここ数年、インドやベトナムはそれぞれ輸出量・価格面で力をつけています。2024年のデータでは、インドは世界最大の米輸出国であり、輸出量は約2,200万トンでした。
ベトナムは850万トン前後ですが、安価で大量生産できる品種が主力です。一方タイ米は、ジャスミン米のプレミアム市場を狙い、高品質志向の輸入業者やレストランチェーンと直接契約を結ぶケースが増加しました。
現地スーパーでの「GI認証マーク」表示や、輸出先ごとのパッケージデザインの工夫など、他国との差別化に取り組んでいます。
国名 | 主な品種 | 特徴 | 輸出量(2024年推定) | ブランドの強み |
---|---|---|---|---|
タイ | ジャスミン米 | 香り・高品質 | 約1,000万トン | GI認証・国際的評価 |
インド | バスマティ米 | 長粒・香り・安定供給 | 約2,200万トン | 多様な輸出先 |
ベトナム | ジャポニカ米類似 | 価格競争力・大量生産 | 約850万トン | コスト優位 |
世界に向けたタイ米のPR活動
プロモーション面においてタイ政府や現地企業は積極的です。アメリカやEUの主要都市で開かれる「タイ・フード・フェスティバル」では、現地シェフと連携した試食イベントや料理教室を開催しました。
また、SNSでもタイ米を使ったレシピ動画が拡散されるなど、若い世代にも広がりを見せています。
さらに、健康志向を意識した「低GI」「無農薬」「グルテンフリー」などの新商品が増え、輸出先の国ごとにパッケージデザインを変更していることも世界に向けたタイ米のPR活動の一つです。
こうした動きが、タイ米のブランド価値をさらに押し上げているのではないでしょうか。
これからのタイ米とブランドの未来
最近ではアフリカや中東など新しい地域にタイ米の輸出が進み、世界中でその魅力が広がっています。
気候変動や他国との競争といった課題も残りますが、タイでは政府と民間が力を合わせて品質やブランド力の維持に努めており、今後、さまざまな国でタイ米が食卓を彩っていくでしょう。
ぜひ皆さんもタイ米のおいしさを味わってみてください。