宇宙へ行ったお米─NASAとJAXAの宇宙稲作計画
人類が宇宙を目指す動きが加速するなか、その舞台にお米が登場しつつあるのをご存じでしょうか。
地球上で当たり前に食べられているお米が、宇宙空間という極限環境でどのように変化するのか。その答えを探るため、アメリカ航空宇宙局NASA(ナサ)や宇宙航空研究開発機構JAXA(ジャクサ)、そして日本の小学校と企業がタッグを組んだユニークな取り組みが進んでいます。
新潟県のブランド米・新之助の種もみが国際宇宙ステーション(ISS)へ送られ、帰還後に子どもたちが育てるという一連のプロジェクトは、農業・教育・宇宙開発を結び付けた新たな挑戦として注目を集めています。
種もみを宇宙へ

2022年、新潟県上越市の田中産業は、市内の小学校に対し、上越産コシヒカリの種もみをアメリカのケネディ宇宙センターから翌年打ち上げ予定のロケットに乗せようという壮大な計画を提案しました。
種もみは約1ヶ月間 ISS に保管され、その後地球へ帰還します。
この計画は「Kome Tane 宇宙 Project 2022」と名づけられ、2023年3月にはコシヒカリの種もみ100粒がロケットで打ち上げられました。
子どもたちに宇宙と農業への興味を持ってもらい、種もみが宇宙でどのような影響を受けるのかを観察する、教育的な試みでもあります。
ISSから戻ったお米のその後
ISSで保管された種もみは帰還後、小学校の児童たちによって校内の小さな水槽田んぼに植えられました。
田植えは2023年6月に実施され、子どもたちは自分たちで育てた苗の成長を観察します。
宇宙を旅した種もみは通常の稲と変わらず順調に育ち、9月には無事稲刈りが行われました。
子どもたちが名づけた「つなげ KIRARa米」の稲は収穫量が少ないため、翌年の種もみとなります。
2024年の11月には2回目の収穫が行われ、お米の一部はプロジェクトに参加した子どもたちへ配られました。
さらに、2025年の3月には第2弾として、新潟県産新之助の種もみが約180粒、宇宙へと打ち上げられました。帰還後、2026年5月に田植えが行われる予定です。
宇宙稲作プロジェクト概要
「Kome Tane 宇宙 Project」の概要をまとめました。
| 項目 | 第1弾(2022ー2023年) | 第2弾(2024ー2026年) |
|---|---|---|
| 品種 | 上越産産コシヒカリ | 新潟県産新之助 |
| 種もみ数 | 100粒 | 約180粒 |
| 打ち上げ場所 | NASA ケネディ宇宙センター(アメリカ) | NASA ケネディ宇宙センター(アメリカ) |
| 保管期間 | ISS内で約1ヶ月 | ISS内で約1ヶ月 |
| 帰還・栽培 | 帰還後、育苗→田植え→収穫 | 帰還後、育苗→田植え→収穫 |
「つなげ KIRARa米」の名前通り、このプロジェクトは次世代へと引き継がれていくはずです。
NASA・JAXAと宇宙技術が拓く未来の米づくり
この米づくりには、NASAやJAXAの宇宙技術が深く関わっています。
田中産業は人工衛星を用いた生育管理システムを導入しており、ISSへの種もみ打ち上げもこの技術がきっかけです。
一方、JAXA は地球観測衛星データを活用し、宇宙ベンチャー企業・天地人と共同で宇宙ビッグデータ米の開発に取り組んでいます。
収穫された米は「宇宙と美水(そらとみず)」としてブランド化され、1等米の評価を獲得しました。
宇宙技術と農業が融合することで、次世代の食料生産に新たな可能性が生まれつつあります。
教育・地域・未来への波及効果
宇宙稲作の取り組みは、教育的価値が非常に高いプロジェクトです。
子どもたちは、自分たちが育てたお米が宇宙を旅したという特別な経験を通じ、農業や宇宙への関心を深めていきます。
宇宙に行ったお米は、教育、地域、技術、そして未来をつなぐ架け橋です。
子どもたちの夢と宇宙技術が結集した稲作は、これからの時代にふさわしい宇宙稲作計画といえるでしょう。
