江戸時代は干し飯を行動食にしていた!

みなさんは「干し飯(ほしいい・ほしめし)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

軽くて長持ち、さらにどこでも食べられるという便利さから、江戸時代の人たちに大人気だった食べ物です。

武士や旅人や商人も、これを携えて全国を歩き回っていました。

古くは、乾飯(かれいい)・餉(かれい)と呼ばれ、古事記や日本書紀に記述があるとされている「干し飯」について詳しくご紹介します。

干し飯ってどんな食べ物?

干し飯ってどんな食べ物?

干し飯とは、江戸時代の旅人や武士たちが、お弁当のかわりに持ち歩いていた便利な携帯食のことです。

作り方はとてもシンプルで、炊いたご飯を天日でカラカラになるまで干します。

これだけで軽くなり、長持ちして、どこへでも持っていける江戸のインスタント食品の完成です。

当時は今のようにコンビニやファミレスがあるわけではなく、旅先で必ず食事がとれる保証はありませんでした。

だからこそ、干し飯は旅人の心強い味方だったはずです。

ちょっと水に浸せばふんわり戻り、湯をかければ即席雑炊になります。忙しいときはカリッとそのまま食べられます。

ご飯があれば元気が出る、というのは昔も今も変わらないのかもしれません。

米文化の日本らしい携帯食といえるでしょう。

どうしてそんなに人気だったの?

干し飯が人気だった理由は、とにかく軽くて便利だったからに尽きます。

米をそのまま持ち歩くと重いし、炊くには火や水が必要です。しかし、干し飯ならほんの少しの水さえあれば食べられます。

すぐにお腹を満たせるので、長距離移動の多い旅人や武士にとってまさに必需品でした。

食べ方がいろいろで、飽きません。

水で戻してそのまま食べたり、味噌汁に入れて雑炊にしたり、乾燥したままお菓子感覚でかじることができます。

江戸時代の人々が、いかに工夫して旅をしていたのかが伝わってくるでしょう。

現代の携帯食と比べると、こんなイメージです。

食べ物特徴良いところ
干し飯乾燥させたご飯軽い・長持ち・水で戻る
おにぎり包んで持ち歩きやすいご飯すぐ食べられる・味が豊富
カロリーメイトなど現代の栄養補助食高エネルギー・便利

こうして見ると、干し飯は昔の人が作り上げた天然のアウトドア食だといえます。

旅と干し飯の切っても切れない関係

江戸時代になると道が整備され、東海道や中山道などを行き交う旅人が増えていきました。

伊勢参りや観光、商売など、目的はいろいろですが、長旅になるとどうしても食事を取りにくい場面が出てきます。

そんな時の助けが、干し飯でした。

旅の荷物は極力軽い方が良いため、重い米や味噌を持つかわりに、干し飯を袋に詰めていました。

山道や宿が混んでいる日には、干し飯を少し水に浸してサッと食べる、そんなふうに使われていたのでしょう。

干し飯のおかげで旅人たちは遠い土地まで歩き続けることができ、文化や情報の交流がより活発になりました。

ただの保存食に見えて、実は江戸の旅文化を支える大切な役割を担っていたといえます。

じわじわ人気復活?現代の干し飯

実は最近、干し飯が現代版の便利食として再注目されています。

炊いた米を乾燥させるだけの干し飯は、防災やアウトドアで用いられる「アルファ化米」と同じです。

現代の人には、干し飯よりアルファ化米の方がなじみがあるのではないでしょうか。

実際に、口にしたことがある方は多いかもしれません。

お湯や水で戻せる手軽さは、非常時にありがたいポイントです。

また、アレンジが意外と多彩で、お湯を注いで雑炊にしたり、スープに加えてボリュームを出したり、炒め物に混ぜて炒飯にしたりと、使い勝手の良さは当時と変わりません。

江戸時代の知恵が、現代の暮らしに役立っていると思うとちょっとワクワクしませんか。

干し飯は、昔の旅人だけでなく、現代の私たちにとっても、いざという時の保存食や非常食として心強い味方といえます。