刑務所メシの今昔物語!「臭いメシ」は過去のもの?
「刑務所メシ」と聞くと、なんだか質素で味気なく、かつての「臭いメシ」というイメージを抱く方も多いのではないでしょうか。
しかし、現代の刑務所では、健康管理や再犯防止を目的として、意外にも栄養バランスが考慮された「きちんとしたご飯」が提供されているのです。
この記事では、昔の刑務所で出されていた食事と、今の食事がどう変わったのかをご紹介します。
あわせて、食事の中心にある麦飯の役割や、体への影響についても分かりやすく掘り下げていきましょう。
かつての「臭いメシ」とは?

「臭いメシ」とは、かつて刑務所で提供されていた質素な食事を表す俗語です。
戦前の刑務所では、受刑者の居室にトイレの代わりとなる汚物桶が置かれていたため、食事中にも強烈な臭いが漂っていました。
そんな劣悪な環境で食事を取っていたことから「臭いメシ」と揶揄されるようになったとされています。
また、食事の内容も粗末で、麦飯に漬物だけというメニューも珍しくありませんでした。
衛生面にも問題があり、食事を楽しむという概念はほとんどなかったと言えるでしょう。
今の刑務所メシは「健康第一」
現代の刑務所では、食事内容が大きく見直され、受刑者の健康管理と規律ある生活の一環として、栄養バランスのとれたメニューが提供されています。
すべての食事は国家基準のもと、管理栄養士によって計算されており、1日3食、カロリーも作業の内容に応じて細かく調整されているのです。
具体的なカロリー配分とメニューの工夫
例えば、青森刑務所では以下のような配分が行われています。
- おかず:1日あたり約1,020kcal
- 主食(麦飯など):1,300~1,600kcal(作業内容に応じて変動)
主食は基本的に麦飯で、白米7に対して押し麦3の割合で混ぜた「麦ばくしゃり」が全国の刑務所で採用されています。
朝・昼・晩のすべての食事でこの麦飯が提供されており、味噌汁や副菜が組み合わさります。
麦飯は臭いどころか健康的?驚きの栄養効果
麦飯というと、「昔の質素な食事」という印象を持つ方も多いかもしれません。
しかし、刑務所で主食として出される麦飯には、高い栄養価があることが明らかになっています。
とくに注目すべきは食物繊維の量です。ある調査では、受刑者は平均的な日本人男性の約2倍の食物繊維を摂取しており、水溶性食物繊維に関しては5倍もの量を取っているという報告もあります。
このような高食物繊維の食事は、糖代謝の改善にも効果があるとされ、2型糖尿病の空腹時血糖値やHbA1c(血糖コントロールの指標)を下げる可能性があると指摘されています。
つまり、現代の刑務所メシは「臭いメシ」どころか、健康維持のための管理栄養メニューへと進化しているのです。
受刑者の体調・作業内容で等級が分かれる
刑務所では、受刑者の性別・年齢・体格・作業の強度などに応じて「食事等級」が設けられています。
冬場の除雪作業など、体力を大きく消耗する業務に就く受刑者には、通常よりも高カロリーな食事が支給される仕組みです。
宗教的な食事制限やアレルギーへの配慮も進んでおり、最近では個別に対応するケースも少なくありません。
これは、国際的な人権基準を踏まえた改善の一環であり、刑務所の食事環境が年々整備されていることを示しています。
刑務所メシは「再犯防止」や「更生支援」にもつながる
刑務所で提供される食事は、単に受刑者の体調を維持するだけではありません。
規則正しい食生活を身に付けさせることで、出所後の生活基盤の形成や再犯防止にもつながると考えられています。
一日三度、規則的な食事のリズムが整うことで、精神的にも安定した状態が保ちやすくなるようです。
また、食育や調理作業を通じて「自分の体を大切にする意識」を育てることも、更生支援の一環として重要視されています。
刑務所メシの印象は、今や「健康管理食」へ
「臭いメシ」という言葉は、もはや過去の遺物です。現代の刑務所メシは、受刑者の健康を支えるために設計された、管理栄養士監修のバランス食です。
麦飯を中心とした食事は、単なる節約食材ではなく、糖尿病予防や腸内環境の改善にも役立つ高機能食でもあります。
刑務所で過ごす人々にとって、今や食事は生活の中で最も規則的で、かつ意味のある行動のひとつとなっているのです。
「刑務所メシ」という言葉に込められた印象は、時代とともに大きく変わってきました。
健康と規律を重視した現代の刑務所メシは、社会復帰の第一歩としても、意義ある取り組みの一つといえるでしょう。