お米と世界をつなぐ貿易の今!意外な取引と日本産米の挑戦
今、日本のお米が海外でも関心を集めるようになってきました。
日本国内では米の消費が少しずつ減っていることもあり、海外への輸出がこれからの農業を支える手段のひとつとして注目されています。
そんななか、世界の米のやり取りを見てみると、アジアを中心に国と国との動きが広がっており、思いがけない国同士で取引が行われていることもあります。
この記事では、世界の米市場の今の流れや、日本産の米がどのように海外とつながっているのかをわかりやすくご紹介します。
世界の米貿易の中心はアジア
お米は世界中で親しまれている主食のひとつです。その生産や貿易の中心は、アジアの国々にあります。
なかでもインドは輸出量が世界一とされており、全体の約4割を担っているともいわれます。
そのほかにも、タイやベトナムが国際市場で大きな役割を果たしていますが、逆に中国やフィリピンのように、お米を輸入している国も少なくありません。
また、アフリカの多くの国では、自国の生産だけでは需要がまかなえず、毎年1,000万トン以上を他国から調達しているのが現状です。
気候変動や輸出規制などがひとたび起きれば、世界中の価格に影響が出ることもあるため、国どうしの結びつきはとても密接です。
意外な国同士の米取引

米の国際取引といえば、生産国が非生産国に輸出するという単純な構図を思い浮かべるかもしれません。
でも実際は、もっと複雑で面白い動きがあるんです。
政治的な理由や文化的な背景、食の好みまで影響して、「まさかこの国同士で?」と思うような取引が生まれています。
ここでは、そんなちょっと意外な米の流れを見ていきましょう。
アフリカと中国の関係が急接近
西アフリカにあるコートジボワールでは、2023年、中国からおよそ9万トンのお米を輸入しました。
それまでのメイン調達先はインドだったのですが、インドが輸出を一時的に止めたことをきっかけに、中国からの輸入が一気に増えたのです。
中国はふだんは自国での消費量が多いため、あまり輸出国としては知られていません。
ですが、備蓄分などを活用して新たな供給元となり、アフリカ諸国との関係を強めています。
タイから「日本風米」を輸入するイラン
イランでは日本食がじわじわと人気を集めており、寿司やおにぎりに合うお米への関心も高まっています。
ただ、日本からの直接輸入はコストがかかるため、代わりにタイから「日本風の短粒米」を輸入するケースが増えています。
タイでは、日本米に近い品種を育てている農家も多く、それがイランをはじめ中東のレストランや食卓で使われているのです。
このように、味や見た目が似ているお米が、思いもよらないかたちで海を越えていることがあるんですね。
米生産国ブラジルがウルグアイから仕入れる理由
ブラジルといえば、南米の中でも大きなお米の生産国です。
それでも、地域によっては輸送や品質の面で課題があり、ウルグアイから輸入をしている地域もあります。
とくにレストランなどでは、安定して良い品質のお米を確保するために、国をまたいで取引をすることもあるといいます。
「自国で作れるものでも、あえて他国のものを選ぶ」という判断も、今のグローバル市場では当たり前になっています。
日本産米輸出の現在地
こうした世界の流れの中で、日本のお米も少しずつ海外での存在感を高めています。
2024年には、日本産米の輸出量が約4万6千トンにのぼりました。
送り先は、香港やアメリカ、シンガポール、台湾など、日本食が広く親しまれている国や地域が中心です。
なかでも香港では、高品質な日本米がレストランを中心に人気を集めており、価格が高くても選ばれることが多くあります。
アメリカでは寿司ブームが続いていて、コシヒカリやあきたこまちのような短粒米が本格派の味として好まれています。
高品質ゆえの課題も
日本のお米は味や品質には定評がありますが、それゆえに乗り越えなければならない課題もあります。
まず、生産コストがとても高く、海外の他のお米と比べて価格がどうしても上がってしまいます。
少量生産や機械化の難しさに加え、輸送費や検査費用が重なり、価格競争では不利になりやすいのです。
また、検疫や輸出規格などの手続きが多く、中小農家には大きな壁となっています。
さらに、世界の主流は長粒種の米のため、日本の短粒種はニッチな存在です。
食文化が異なる地域では、日本米の魅力を正しく伝えるマーケティングも重要で、単に輸出するだけでなく、現地での広報や販売方法が求められています。
日本米の未来は国内外で分かれる
2025年の今、日本国内ではお米の価格が高くなってきています。
天候の不安定さや作付け面積の減少、農家の高齢化など、さまざまな理由が影響しているためです。
その一方で、海外では日本のお米の価値がじわじわと上がってきています。
「安全でおいしい」「本物の和食に合う」といった理由から、アジアや欧米の富裕層を中心に選ばれる存在になっているのです。
政府は2030年までに輸出量を35万トンに増やすという目標を立て、品種の開発や物流支援に力を入れ始めました。
これからは、国内の需要と価格を守りつつ、海外での評価をどう活かしていくかがカギになります。
世界のあちこちで「日本のお米がおいしいね」と言われるようになれば、日本の田んぼはもっと元気になるはずです。