地球温暖化とお米?気候変動が稲作に与える影響とは

 この百数十年の間に、世界の平均気温は1.09℃、日本の平均気温は1.28℃上昇したといわれており、このままいけば2100年には最大で5.7℃も上昇すると予測されています。

地球温暖化は、ただ気温が上昇するだけでなく、大雨が増えたり、暑い日が増加したりすることで、私たちの健康や命に影響を及ぼし、動植物の生態系の損失や絶滅に繋がる可能性もあるのです。

もちろん、お米も例外ではありません。

今回は、気候変動が稲作に与える影響について、詳しく解説します。

気候変動がもたらす温度変化

気候変動とは、気温や気象パターンの長期的な変化のことをいいます。こうした変化が起こるのは、太陽周期の変化などによる自然現象もありますが、1800年以降は主に人間が引き起こしています。

主な原因は、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの増加です。

電気や乗り物を動かすのに必要な化石燃料(石炭や石油)などを燃やすと、温室効果ガスが発生します。

大量に排出された温室効果ガスの大気中の濃度が高まり、熱の吸収が増えると、気温が上昇し、地球温暖化へと繋がります。

気温が上昇することで、深刻な水不足や海面の上昇、氷の融解、干ばつ、大規模な火災などなど、さまざまな影響を及ぼすのです。

気候変動と稲作

現在より3℃気温が上昇すれば、北日本を除き、米の生産は減収するといわれています。

気候変動が起こることで、稲作にどのような変化があるのでしょうか。 

・稲の成長サイクルの変化

生育中に気温が高くなると、水稲の生育が進み、出穗期や収穫期が早まってしまいます。

出穗期前の気温が高いと、稲の茎が伸び、倒伏しやすいです。

・収穫期間の短縮

気温が高いと、葉よりも穂が先に熟してしまい、刈り遅れになってしまうことがあるため、収穫期間を短縮する必要があります。

・生産量や品質の変化

平均気温が高くなることで、基部未熟粒や背白粒などの白未熟粒が多くなってしまい、お米の等級が低下します。

生育期間中に高温だった場合、分げつ(茎の根元から新しい茎が生えること)が増え、茎数や籾数が過剰になり、外観品質も低下してしまいます。

 当然、生産量にも影響します。

病害虫の増加と稲作への影響

稲作は苗の時期から収穫まで、常に病害虫との戦いでもありますが、気温が上昇することにより、病害虫が増加する恐れがあります。

しかも、日本での発生数が増加するだけでなく、海外から飛来する種類や数が増加する可能性もあるんです。

病害虫の代表であるカメムシは、米粒の汁を吸って黒く変色させます。

ウンカは葉や茎から汁を吸って稲を枯らしてしまうため、田んぼを全滅させてしまうこともあるといいます。

このように、病害虫が増加すると、収量も品質も低下するため、農家にとっては深刻な問題となっています。

水資源管理の重要性

地球温暖化によって気候変動が起こり、現在も世界の多くの地域で水不足が深刻化しています。

日本では、農地に人工的に水を供給する灌漑農業が一般的ですが、世界的にはまだ雨水だけに頼る天水農業を行っているところがほとんどです。

灌漑農業であれば、水不足の時に用水路などから水を補給して干ばつを防ぐことができるので、効率よく生産することができます。

ただし、灌漑にはさまざまな課題もあり、水資源の問題に対する施策が求められています。


未来の稲作を守るために

世界規模で地球温暖化対策に取り組んでいますが、残念ながら今日明日に解決できる問題ではありません。

食料自給率が低い日本でも、ほぼ100%自給できるお米を守るため、国レベルでさまざまな対策や試験が行われています。

温室効果ガスを減らす取り組みとともに、高温耐性があり、品質が低下しにくい品種の研究も進んでいます。

温暖化に強いお米の品種が普及することはもちろん、私たち一人ひとりが省エネルギーを意識し、地球温暖化を防ぎましょう!