コメ余りとコメ不足が同時に起こる理由
スーパーでコメが見つからない一方で、どこかには売れ残ったコメがある ―そんな不思議な状況が起こるのはなぜでしょうか。
実は、コメの不足は、国内にある量だけで決まるわけではありません。
生産量と消費量のバランスに加え、産地から店頭までの流通や在庫の偏りが関係しています。
「令和の米騒動」では、需要予測と実際の消費のずれ、流通段階の在庫減少などが問題になりました。
コメ余りとコメ不足が同時に起こる仕組みを、順番に見ていきましょう。
コメは全国にあっても必要な場所に届かない

コメの流通には、生産者、集荷業者、卸売業者、小売店など、さまざまな事業者が関わっています。
収穫されたコメが消費者の手元に届くまでには、集荷や保管、精米、輸送といった工程を経ています。
輸送や取引先の確保に時間がかかるため、国内にコメが存在していても、すぐに店頭へ並べられるとは限りません。
たとえば、ある地域に在庫があっても、別の地域の需要が急増すれば、必要な店舗まで十分に供給できなくなります。
つまり、コメの供給を考えるときは、全国の総量だけでなく、どこに、どの段階で、どれだけ在庫があるかを把握しておくことが重要です。
需要予測と実際の消費がずれる
コメの生産量は、すぐに増やせるものではありません。
田植えから収穫まで一定の期間を要するため、農家や流通業者は将来の需要を予測しながら生産や仕入れを計画します。
ところが、予想より消費が増えると、供給が追いつかなくなることがあります。
農林水産省によると、2023/24年および2024/25年にかけては、訪日外国人による需要や家庭での購入量の増加などにより、実際の需要が見通しを上回りました。
さらに、2023年産米では高温障害などの影響で精米歩留まりが低下し、玄米から得られる精米の量が減少しました。
その結果、精米量を確保するために、より多くの玄米が必要となったのです。
予測と実績の小さなズレでも、在庫に余裕がなければ、品薄や価格上昇につながります。
在庫の偏りが品薄と価格高騰を招く
コメ不足が問題になった2024年以降、民間在庫の減少が大きな要因となりました。
在庫が少なくなると、卸売業者などは次の仕入れができるか不安になり、必要な量を確保しようと集荷競争を強めます。
その結果、取引価格が上がり、店頭価格に影響が及びます。
全国の在庫量が一定程度あっても、流通の途中に在庫が集中したり、店頭向けの供給が滞ったりすれば、消費者は不足を感じます。
| 状況 | 起こりやすい問題 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 生産量が需要を下回る | 在庫が減る | 消費に供給が追いつかない |
| 在庫が流通の途中に偏る | 店頭で品薄になる | 店舗への供給が滞る |
| 仕入れ競争が激しくなる | 価格が上がる | 業者が確保を急ぐ |
| 需要が予測を下回る | 売れ残りが生じる | 仕入れや生産が需要を上回る |
コメ余りとコメ不足を防ぐために
コメ余りとコメ不足を防ぐには、生産量だけでなく、需要や在庫の変化を継続的に把握することが重要です。
需要を過小評価すれば供給不足につながり、反対に過大評価すれば、売れ残りや価格の下落を招くおそれがあります。
農林水産省は、2024年以降のコメの価格高騰を検証し、生産者や流通業者の在庫、販売状況などの把握を強化しました。
また、人口動態や実際の消費量、訪日外国人の需要などを踏まえ、需給見通しの算出方法を見直しています。
政府備蓄米を、供給が不足した際に市場へ放出するための仕組みです。
ただし、放出を決めてから実際に小売店へ届くまでには流通の時間がかかるため、適切な判断と迅速な供給が求められます。
コメは、収穫すればすぐに供給量を増やせる商品ではありません。
だからこそ、生産、在庫、流通、消費の情報を共有し、変化を早めに捉えることが大切です。
生産者が安心してコメを作り、消費者が毎日コメを食べられる環境を実現するためには、安定したコメの供給体制を整えることが今後の課題といえます。
